宗右衛門 『鉄道ジオラマの世界』 作品集 『夏の記憶』シリーズ
踏切を渡るとき、遠くにこちらにやってくる気動車が見えた。 「あっ、急行だ! よぉ〜し!」と気合いを入れる。
「これはいいチャンス!」と、急いでカメラバックからカメラを取り出し構えた。 「柵がちょと邪魔かな…」 こんな時、「望遠レンズがあたらな…」と、いつも思う。 勾配区間なので、気動車のンジン音がゆっくりと近づいてきた。
「いや、縦ではなく横にしよう」 カメラを構え直し、ファインダーを覗いた瞬間、三輪トラックがトコトコと音を立てて割り込んできた…。
トコトコトコ…、トラックは何のためらいもなく接近してくる。 それと同時に気動車も接近してくる。 必死でアングルを調整する。 「うわぁ、かぶった!」
焦りつつカメラを縦に構え直し、気動車のフロントサイドだけでも!、と思ったが…。 「うがぁ、荷台が…」 願い通じず…、撃沈…。
「くっ!」と唇を噛んで、踏切待ちする三輪トラックを睨みつつも、仕方なく後追い撮影に望みを繋ぐ。
踏切から先は勾配区間だし、夏のこの時期は何て言っても下草が邪魔…。 「うぅ、あまりよくないなぁ…」
「ありゃぁ〜」 リアはブラインドの中…。 しかも草が…。 水鏡にも写らず…。 やっぱり撃沈…。
いつもこんな失敗ばかり…。 それでも、夏休みには、線路脇に立つ大きな木の太い枝に腰を下ろして、目の前を通過していく列車を眺めること が、一番の楽しみだった。
NAK企画 様 蔵 (茨城県水戸市)
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