宗右衛門 『鉄道ジオラマの世界』 作品集   『春の記憶』シリーズ
            

◆「おばぁ〜ちゃん! バスがきたよ!」 (2007年)

   

                     その町の郊外に、「日向(ひなた)が原」と呼ばれる小さな集落があります。
                      「日向が原」というその地名は、その昔、開拓によって切り開かれた地域で、年間を通して日当たりがよい場所となった
                     ことからつけられた、という文献も残っているようです。
                      その小さな集落の一番の見どころは、なんといっても『枝垂桜』です。
                      春になると見事なまでに咲きほこる淡い色の花は、青い空から滝のように流れ落ちてくるように見えるのでした。
                      枝垂桜の下を、1時間に1本ないし2本のバスが町まで通っています。
                      ほらほら、どうやら、バスがやってくる時間が近づいてきたようですよ。

                         孫を連れたおばあちゃんがやってきました。
                          女の子は、枝垂桜の下に潜り込んで、桜の花と青い空を眺めたり、桜の枝を引っ張ったり。
                         暖かな春の一時を存分に楽しんでいるようです。
                          おばぁちゃんは、自由奔放に走り回る孫が、転びはしないかとちょっと心配のようです。

                         バス停ではもうひとり、若い女性がバスを待っていようです。
                         待合所のベンチには大きなバックと筒状の袋。手に持ったカメラからすると、どうやら彼女は写真を撮りながら
                        一人旅をしている途中のようです。
                         最近は、一人旅する女性が増えているようだし、彼女も旅の一コマとして、その地域の鉄道やバスを撮影してい
                        るに違いありません。

 

                                遠くにバスのクラクションが聞こえました。
                                カーブが多く道幅も狭い路線なので、運転士は安全確認に苦労する道だそうです。
                                枝垂桜の下でひとりはしゃいでいた孫娘が、遠くにバスの車影を見つけみたいです。
                                「おばぁ〜ちゃん バスがきたよ〜!」と、女の子が指を差しています。
                                「ほら、ほら、早く降りておいでよ!」と、手招くおばぁちゃん。
                                女の子の言葉を聞いたひとり旅の女性は、待合所のベンチから立ち上がり、
                                 バスがやってくる方向を目視し、撮影のチャンスをうかがっています。

                                元気な声と笑顔、そして少しの緊張感が、のどかな春の「日向が原バス停」に
                                 しばらくの間漂っていました。

 

 

                          ◆ 作品サイズ   100mm×100mm×85mm (台座を含む)
                          ◆ 人    物   TOMIX社製品を加工・着色
                          ◆ ガードレールKATO社製品を加工・着色
                          ◆ ベンチ・ネコ   ウッドランド製を加工・着色
                          ◆ その他ストラクチャーは全て自作

 

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